男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。
プロローグ
夜は、周りの音が、いつもより大きく感じる。
冷蔵庫の低い唸り声。
遠くを走る車のタイヤが、濡れた道路を削る音。
壁の向こうで誰かが立てた、たった一つの物音。
それだけで胸が跳ねる。
私、月城凪咲は、息を殺して部屋の隅に座っていた。
暗い部屋の中、カーテンの隙間から淡い月の光が差し込み、床に細い線を落としている。
時計はもう深夜を過ぎているのに、眠気はどこにもなかった。
眠ったら、終わる気がした。
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