男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。

大丈夫。大丈夫。大丈夫。


心の中で何度も、何度も繰り返す。


言葉にすればするほど、逆に自分の心が崩れていくのが分かった。



机の上には、小さなバッグがひとつ。


その横に、畳んだ制服。


それから、黒いウィッグ。



手を伸ばして、ウィッグの毛先を指先で撫でた。


冷たくて、柔らかい。



これを被った瞬間、私は別の人間になる。


そう思うと、安心よりも先に、吐き気がこみ上げた。
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