醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 ここは、帰る場所ではない。
 ここに、自分の居場所はない。

 その事実だけが、はっきりと胸に落ちてきた。

 マルケルの隣で、弟クリフは何も言わずに立っていた。
 かつて無邪気に笑い、「姉上」と呼んでくれた弟は今や視線を合わせることすらしない。

 エリシアにそっくりなプラチナブロンドの髪に母クリスティナ譲りのアクアマリンの瞳。
 幼かった弟は美しい男に育っていた。

「クリフ・クルーシー、随分と大きくなったのね」
「姉上⋯⋯」
 エリシアにした非道な対応を覚えているかのように、クリフは気まずそうだった。

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