醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 差し出された手の先を辿ると、燭台の光を反射して眩く輝く金髪と、透き通るアメジストのような瞳がそこにあった。
 甘さと鋭さを併せ持つその眼差しは、記憶の奥を静かに揺さぶる。

 ーーリオネル・モンド。
 エリシアと同世代で、かつて社交界一番の人気を誇った男。
 今は父の爵位を継ぎ、若き公爵として宰相職につき政界でも存在感を放っている。

 ふと、エリシアの脳裏にアイリスの姿が過ぎる。
(初夜さえ妻を抱かなかったなんて、リオネルはもしかして⋯⋯男色?)

 エリシアはリオネルに対して、義務を果たさないような男ではなく誠実な印象を持っていた。
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