醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 エリシアがそう思い直していると、目の前に跪き手を差し出す元婚約者と視線がぶつかる。

 パトリス王太子の甘く、傲慢で、逃げ場のない笑みにエリシアは身震いした。
「エリシア。次は、僕と踊ってもらおうか」
 拒否の余地を与えない声音。

 周囲の貴族たちは、王太子が聖女に正式にダンスを申し込んだという“美しい光景”に息を呑む。
 逃げ道のない状況にエリシアはゆっくりと息を吸い込み、その手を取った。

 指先に触れた瞬間、ぞくりと背筋を冷たいものが走る。
 まるで、鎖を嵌められたかのような感覚。

 音楽が再び流れ出す。

 パトリスは立ち上がり、エリシアを引き寄せた。
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