醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 喉が詰まり、言葉が途切れそうになる。

 その声を聞いた瞬間だった。
 リオネルの表情が、音を立てて崩れた。

 強張っていた瞳が潤み、張り詰めていた理性の膜が破れる。
 アメジスト色の瞳から、宝石のような涙が一粒、静かに頬を伝って落ちた。

 エリシアは、その光景に息を呑む。
(リオネル様?)

 彼は、常に淡々とした男だった。
 感情を表に出さず、冷静で、どこか人を突き放したような印象。

 アイリスとの離婚話を聞いた時には、権力のためなら平然と人を切り捨てる男だと、どこか納得していた。
< 196 / 234 >

この作品をシェア

pagetop