醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 決定権はすべて、ここにいるエリシアにあると意図的に示すような、静かな重みを帯びていた。

 神殿の石造りの廊下は冷たく、薄暗い光がステンドグラスを通して床に影を落としている。
 埃の匂いと、微かに香る聖香の匂いが混ざり合い静寂を重厚に包んでいた。

 かつての自分の居場所であるクルーシー侯爵家。

 広い庭園、暖炉の火に照らされた書斎、笑い声に満ちた食卓。
 両親は自慢の娘と誇らしげに言い、弟は無邪気に懐いてくれた。

 自分はそれを「幸せ」と信じ、疑うことなどなかった日々。

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