醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 エリシアは限界だった十年。
 見捨てられ、拒絶された。
 やっと心が通じ合えたと思った男は、最初から目的しか見ていなかった。
(聖女が人を虐殺した歴史⋯⋯私にも、力があるなら。人間なんて滅ぼしてしまいたい。どうして傷つけるの? 何がしたいの?)

 エリシアの思考が、闇となって心を覆いかけた、その瞬間――重厚な扉が、ゆっくりと開いた。

「レイディン帝国より、セドリック・レイディン皇子殿下のご到着です」
 ざわり、と法廷が揺れる。

 真紅の礼服。
 胸元に連なる数え切れない勲章。
 眩い銀髪をオールバックに撫で付け、背筋は剣のように伸びている。

 一目で格が違うと分かる。
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