醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 舞踏会で見せた、非の打ち所のない貴公子の姿はない。
 背筋はわずかに丸まり、肩には目に見えるほどの疲労が沈殿している。

 エリシアは、そっとリオネルを盗み見る。
(ノイダン王家を裏切った? ラリサまで、切り捨てて? もしかして、私のため?)

 胸の奥で生まれた問いを、エリシアはすぐに振り払う。
 リオネルとブレイクの間に、何らかの取引があったのだろう。

 リオネルは感情で動く男ではない。

 少なくとも、エリシアの目にはそう映っていた。
 それでも王国の宰相にまで上り詰めた男が、身分を捨て、祖国を裏切るとは思っていなかった。

 ふと、強い視線を感じる。
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