醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 エリシアの父マルケルだった。
 その目に宿るのは、心配でも、悔恨でもなく計算と期待だ。

(私を、また利用するつもりね)

 エリシアを“聖女”として差し出せば、爵位を失っても、帝国で新たな地位が得られる。
 そんな打算が、ありありと透けて見えた。

 その隣にいる弟クリフ。
 彼の顔を見た瞬間、エリシアは息が詰まるような感覚に襲われた。

 周囲が蒼白に固まる中で、クリフだけが、どこか安堵したような表情をしている。
(もしかして)私を追い出したこと、後悔してた?)

 エリシアは、再び期待した自分が滑稽で情けなくて心の中で自嘲する。
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