醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 言葉の裏にある打算は、あまりにも分かりやすかった。
 聖女の父ならば帝国での地位は約束され、新たな爵位も賜われるだろう。

(吐き気がする。この人が、私の父親なんて)

 エリシアは、唇を噛みしめた時、突然、別の声が響いた。

「姉上⋯⋯いえ、聖女様!」
 マルケルの隣にいた弟クリフが、一歩前に出ている。
 エリシアは、思わず目を見開いた。

「クリフ?」
 彼は意を決したように拳を握りしめ、震える声で問いかける。
「どうして魔獣の森などに行ったのですか? この十年、リオネル様と必死で姉上を探しました」
 アクアマリンの瞳に、涙が滲んでいた。

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