醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 心の奥で問いかける。
(クリフ、貴方に泣く資格はあるの?)

 エリシアは一度、深く息を吸い込む。
 胸いっぱいに空気を取り込むたびに、決意と緊張が体を駆け巡る。
 肩の力を抜き、静かに吐き出すと、彼女はようやく口を開いた。

「私は死のうと思ったんじゃない。生きたかったのよ。でも、人に会いたくなかった。だから、魔獣の森に行ったの」

 その声は低く、柔らかいが確かな響きを持ち、部屋の空気にしみわたった。
 床板のきしむ音も、窓の外の小鳥の囀りも、全てがその言葉を包み込むように感じられる。

 クリフの肩が、びくりと震える。
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