醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
『はあ、王妃にもなれない娘に価値などない。出ていけ。見ているだけで吐き気がする』
 父マルケルは書斎から顔を出し、失望と苛立ちを隠しもしなかった。
 王家との縁が切れたことが、何よりも許せなかったのだろう。

『気持ち悪い顔⋯⋯』
 五歳年下の弟、クリフはエリシアを見るなり唇を歪めた。
 その目にあったのは、怯えではない。
 明確な嫌悪だった。

 かつて、後ろをちょこちょことついて回り、「姉上」と笑っていた少年はもういない。
 美しさを失い王太子妃になるという侯爵家にもたらす利益を失った瞬間、エリシアは家族であることすら剥奪されたのだ。

 ――ここに、私の居場所はない。

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