醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 白い石造りの修道院は静かで、回廊を吹き抜ける風がかすかに祈りの香を運んでくる。
 鐘の音は規則正しく、ここが俗世から切り離された場所であることを強く主張していた。

「エリシア様、お久しぶりです」
 不意にかけられた声に、エリシアは足を止める。

 振り返った先にいたのは、かつて自分を慕ってくれていた少女。いや、今はもう立派な年若い女性だった。

 赤い髪は肩口で無造作に結ばれ、好奇心に満ちたエメラルド色の瞳が懐かしさを湛えてこちらを見つめている。

「アイリス嬢?」
 エリシアは思わず目を見開いた。

「はい! 覚えていてくださったんですね」
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