醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「エリシア・クルーシー。何が不満なの?」
 疲れ切ったような、だがどこか苛立ちを含んだ声だった。

「パトリスの婚約者に戻してあげると言っているのよ。王妃になれるのに。貴女はその為に努力して来たでしょ」
 それは、褒美の提示だった。

 従えば与えられる、甘い首輪。
 でも、エリシアには人ではなくなる制約に聞こえる。

「お断りします。もう二度と、パトリス王太子ともノイダン王家とも関わりたくありません」
 エリシアは、一歩も下がらない。

「ふざけるな!」
 床を蹴る音と共にパトリスが鬼の形相で駆け寄り、エリシアの手首を乱暴に掴んだ。

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