醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 石畳の隙間に溜まった水が夜になると冷気を吐き、肺の奥に重く沈む。
 そのせいか、誰もが胸を押さえながら歩き浅い呼吸を繰り返していた。

 この地方で流行ってる感染症は止まらない咳。

 昼間は抑え込めても、夜になると必ず喉を突き破るように溢れ出す嫌な咳だ。

 原因不明の感染症。

 若く体力のある者は、熱に浮かされながらも数日から数週間で回復する。
 しかし、老人や持病を抱えた者は例外なく衰弱し静かに死んでいった。

 この地を治めていた男爵もそうだった。
 元より呼吸器を患っていた彼は、発症から数日で息絶えたという。
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