醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 おそらく、マリアンヌ王妃とルナ王女が夜の私室でワインを傾けながら思いついた意地悪だろう。
 その一言が、どれほど多くの視線を歪め、聖女を“女”として値踏みする材料になるかも考えずに。

 ノイダン王国において貴族令嬢は大抵二十代前半には結婚する。
 我儘で家出して婚約破棄され出戻った売れ残りというレッテルを貼り、エリシアを咎めたかったのは明白だ。

 エリシアは、乾いた溜息を胸の奥で押し殺した。

「うちの孫娘も今年で二十五なのよ。まだ嫁にも行けてなくてねぇ。聖女になれるかしら?」
 灰色の髪をまとめた初老の女が、冗談めかして話しかけてくる。

「失礼します」
 低く鋭い声が割って入った。
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