醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
ブレイクが一歩前に出る。その長身が影を落とし、周囲の空気が一瞬で張り詰めた。
「こちらはエリシア・クルーシー侯爵令嬢。法的には国王陛下より、敬われるべき存在とされています」
次の瞬間、初老の女は喉を押さえ激しく咳き込み始めた。
「コフッ⋯⋯あら、嫌だ。私も罹ったのかしら⋯⋯コフッ」
周囲の人々が、一斉に距離を取る。
恐怖は、慈悲よりも速く伝播する。
エリシアは静かに一歩踏み出した。
白い手袋を外し、咳き込む女の胸元へとそっと手を翳す。
眩い光が溢れ出した。
柔らかく、しかし確かな温度を持った光が女の身体を包み込む。
咳が、嘘のように止まった。
「聖女様」