醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「本物だ」
 周囲が羨望の眼差しを向けるもエリシアの心は冷めていた。

 女は姿勢を正し、深く頭を下げる。

「聖女様、私はカーラと申します。夜になると咳が止まらなかったんです。でも、もう息が苦しくない」
「カーラさん。それは良かったわ。この病は、まず夜に現れるから気づかないうちに感染していたのかもしれないわね」
 エリシアの言葉に、ざわめきが広がる。

 不安と期待に満ちた視線が、エリシアへと殺到した。

「皆様、慌てないでください。症状が出るまで潜伏期間もありますし、若くて体力があれば自然治癒力で助かります。まずは重篤な患者からです」
 そう言い残し、エリシアは踵を返した。

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