醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 わざと、気づかないふりをする。

「酷いな。十年ぶりだけど、僕を忘れたの? 婚約者のパトリスだよ」
「婚約は、破棄されていたはずです。新しいお相手がいるのでは?」

 時間の感覚を失いながら数えた夜と朝。
 十年という歳月が、確かに流れている。

「まあ、確かに再来月には結婚式を挙げる予定だった。でも、間に合った」
 抱き寄せられた腕を、エリシアは突き放す。

「離れて。気持ち悪いわ」
 その一言に、周囲の空気が凍りつく。

 王族に対して不敬な態度をとったからだ。

「パトリス王太子殿下。聖女様が戸惑っております」

 低く、よく通る声。
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