醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 黒衣を纏った、茶髪に長い前髪から覗く琥珀色の瞳の男。

 地味な装いにも関わらず、異様な存在感。
 その視線は、獲物を値踏みする捕食者のそれだった。

「ブレイク⋯⋯」
 パトリスが、珍しく信頼を寄せる男。
 エリシアは、言いようのない寒気を覚えながらその男と視線を交わした。

(この男は何者?)

 ♢♢♢

 促されるまま馬に乗せられたエリシアは、背後から伝わってくる体温を気持ち悪く感じていた。
 自分の意思など、最初から考慮されていない。

「エリシア、本当に美しいな。こんな女神のように成長していたなんて」
 耳元で、パトリスの甘ったるい声が囁かれる。

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