醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。

8.もうおしまい

「自分の国の聖女を差し出すなんて、腐った民度だな」
 海賊の男は、唇の端を歪めて嘲った。

 焼けた肌に刻まれた傷跡が引き攣れ、その笑みは人間のものというより獲物を値踏みする獣に近い。

「まあ、元から、この地に滞在中の聖女は、いただく予定だったがな」
 男は肩を竦め、同時にエリシアの腕を乱暴に掴んだ。

 指が食い込み、骨まで締め付けられる感覚に、息が詰まる。

「痛いっ」
 抵抗する間もなく、エリシアは引きずられるように岸を離れ船へと放り込まれた。
 甲板に足が触れた瞬間、鼻を突く匂い。

 潮の生臭さに、血と油の混じった重たい悪臭。
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