醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 板張りの床は濡れて滑りやすく、立っているだけでも体勢を崩しそうになる。

 周囲では、酒に酔ったような荒々しい笑い声が響いていた。
 粗末な剣や斧がぶつかり合う音。

 無遠慮な視線が、肌を舐め回すように集まる。
 その中でほんの一瞬だけ、陸にいるブレイクと目が合った。

 琥珀色の瞳。
 だが、そこに何が映っているのかエリシアには分からない。

 焦りも、怒りも、助けようとする気配もない。
(何もない。もう、本当にどうでもいい⋯⋯)

 エリシアの胸の奥が、ひやりと冷える。
 期待が芽生えそうになった自分を、慌てて押し殺しエリシアは視線を逸らした。

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