醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「盗みを働く海賊ごときが聖女を、どう利用するつもり?」

 甲板の揺れに踏ん張りながら、言葉を絞り出す。
 自分でも驚くほど、声は冷静だった。

「賊ごとき?」
 男は低く笑い、わざと顔を近づけてくる。

 酒と血の匂いが、息に混じって吐きかけられる。

「高貴な聖女様よぉ。お前はその“賊”のオモチャになるんだよ。分かってるのか? ああっ?」
 耳元で囁くように、粘ついた声。

 次の瞬間。

 エリシアは乱暴に髪を掴まれた。
 ぐっと引き上げられ、頭皮が剥がれるような激痛が走る。

「痛っ!」
 頭皮を引き裂かれるような痛みに、エリシアの視界が一瞬白く揺れた。
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