醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 皮肉でも媚びでもない。事実を述べただけの声。

 その夜、エリシアは高熱にうなされる。

 精神的疲弊と過酷な環境が、内側から身体を焼き尽くす。
 誰かに名前を呼ばれた気がして目を開けると、すぐ傍に銀髪があった。

「離れないで、セドリック」
 無意識に口から零れたその言葉に、セドリックは答えず、ただ立ち去らなかった。
 冷たい布でエリシアの額を拭き、水を口元に運ぶ。

「私に優しくする事で、貴方に得があるの?」
 掠れた声で問いかけるエリシアに、セドリックは低く短く答える。

「黙れ」
 押し殺した声には、怒りではなく、深い孤独が滲む。

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