あと30日で、他人に戻るふたり
残りわずかになっていたダンボールを片付け、ついに部屋にあった荷物はすべて綺麗になった。


どっちが何をするという口約束はしていなかったけれど、それぞれなんとなく掃除や洗濯をして一日が過ぎていく。


お昼すぎにはソファに寝そべる彼がスマホをずっと見ていて、私が周りをパタパタと歩いて行き来する構図が定着してしまった。


「はあ。疲れた…」

動きすぎて、さすがに休憩を挟むべくソファになだれ込む。

クッションを頭の下に入れて、ごろんと横になった。


つけていないテレビの画面は真っ暗で、ちょうど鏡みたいに私たちを映している。
何気なく画面越しに自分の姿を見て、はっとした。


朝からスウェットのまま着替えていない。
溜まっていた家事をして疲れて、結んでいた髪の毛もなんだか緩い。

気の抜けた格好。
こんなの他人に見せられたもんじゃない。

────そう、思うのに。


隣を見やると、私以上に緩い姿でリラックスしている彼が、想像よりも定着している。

スウェットも寝ぐせも、朝のまま。
もしかしたら昨日からこのままかもしれない。


この人が“これ”だから、私も別に“これ”でいいか。
そう思って、またごろんと寝転んだ。


ちゃっかり自分もクッションを枕代わりにしている彼に、ふと声をかけてみる。


「……今日、ずっとこんな感じですね」

こちらを向く気配がしたけれど、私もスマホをいじったままで特に彼の表情は確認しない。

「このまま夜になりそうですよ」

「うん」

「出かけないんですか?」

「めんどくさい」


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