あと30日で、他人に戻るふたり
まだなにか言いたそうな彼をリビングに残して、買ってきた荷物をキッチンに持っていき、仕分けして冷蔵庫に入れたり整理する。


リビングからはテレビの音が聞こえてきた。
……たぶん、ソファに寝そべってテレビを流しながらいつものスマホタイムだろうな。

行動パターンまでだんだん見えてきた。


ひとり暮らしの時に使っていた土鍋を出して、少し考える。

────これだと二人で食べるには小さいか。

すぐに土鍋をしまい、深めの大きなフライパンを出す。
調理器具もそんなに種類がないので、最低限のものばかりだ。

鍋がないなら、フライパン。

そこにベースになるスープを仕込んでいたら、ふとキッチンに影が落ちる。


「何すればいい?」

「え!料理できるんですか?」

ここで彼が現れるとは思いもよらず、驚いて食材が転がった。

「いや、できないけど。何かすることあれば、やる」


料理をしない人ができることって、なんだろう。
ここで『座っててください』と言うのは簡単だ。

でも、あんなに“めんどくさい”を連呼する彼がここまで出向いたのだから、無下にするのは違う。


< 111 / 223 >

この作品をシェア

pagetop