あと30日で、他人に戻るふたり
「ここさ、もうちょい削った方がいいね」

「はい」

「あと、このデータは裏取りしといた方がいいかも」

「分かりました」

うなずきながらメモを取り、再作成に生かせる部分を切り取る。

仕事としては正しい。
正しいのに、なぜか少しだけ落ち着かない。


「……朝から集中してるね」

「え?」

急に話題が変わって、思わず顔を上げる。

「なんか、いつもより静かだなーと思って」

そんなこと、言われたことがあっただろうか。


きょとんとして、首をかしげて。
ちょっと考えてもやっぱり分からなくて。

腑に落ちなくて、聞き返す。


「…そうですか?」

「うん。いつもよりもうちょい、こう…余裕ある感じ」

言いながら、八代さんがじっとこちらを見ている。
なんとなく観察されているみたいで、慌てて視線を逸らした。


「週明けなんで、気合い入ってるだけかもです」

適当に返すと、「そっか」と彼は軽く笑った。


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