あと30日で、他人に戻るふたり
『帰ってくると、なーんだか安心しちゃうのよねぇ』

という、朝に篠原さんから聞いた声が不意に頭に浮かんだ。


「……いや、」

心でつぶやいたはずが、口から出ていた。

「なに?」

「なんでもないです」

慌てて視線をテレビに戻して、ご飯を食べ進めた。


そこでポケットに入れていた私のスマホの通知音が鳴り、なんだろうと取り出して画面を見る。

『八代 修』
という文字が飛び込んできて、どきりとした。


画面を開くと、三通のメッセージが届いていた。

『明日の店の情報送るね』

『ノー残業で行こう』

そこに、お店のURLも添えられていた。


……なんで私、行くって言っちゃったんだ?

いや、だって憧れてた人とのご飯だし。
断る理由なんてなかったはずだ。

それでも、なんで────。


答えは見つからないまま、隣を向く。


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