あと30日で、他人に戻るふたり
10日目 一ヶ月だけなので
パソコンを立ち上げて、いつも通り仕事を始める。
昨日と何も変わっていないはずなのに。
どうしてか少しだけ、落ち着かなかった。
『ノー残業で行こう』
昨日送られてきた、八代さんからのメッセージ。
キーボードを打つ手が、止まる。
約束したのだから今夜の約束は、絶対に行くべきだ。
分かってるけれど、どこかその約束が重いものに感じてしまう。
八代さんのことは、ずっと憧れていた。
仕事ができて、人当たりも良くて。
そしてさりげなく気を遣えるところも。
彼のことを悪くいう人なんて、社内には絶対にいない。
そういう人と食事に行けるのは、普通なら嬉しいはずなのに。
少し前の私だったら、きっともっと心待ちにしていたはずだし、素直に楽しみにしていたはず。
自分の服を見下ろす。
なんというか、普通の服だ。
せっかくなんだからおしゃれしてきたってよかったのに、あまりにも無難な服。
……これでよかったのか、正解が分からない。
「穂村」
声をかけられて顔を上げると、八代さんが立っていた。
まさに考えていた人が目の前に現れて、内心ちょっと焦る。
「今日、定時で上がれそう?」
「はい、大丈夫そうです」
確証もないのに、すぐに返事をしてしまった。
今日が締め日の書類はないはずだし、明日の会議のためのデータも揃えてある。
なにも、抜かりはない。
午前中のうちに、やるべき作業はひと通り片付けた。
画面に向かっている間は、余計なことを考えずに済む。
それなのに、ふとした瞬間に思い出すのは、今夜のことだった。
••┈┈┈┈••
昨日と何も変わっていないはずなのに。
どうしてか少しだけ、落ち着かなかった。
『ノー残業で行こう』
昨日送られてきた、八代さんからのメッセージ。
キーボードを打つ手が、止まる。
約束したのだから今夜の約束は、絶対に行くべきだ。
分かってるけれど、どこかその約束が重いものに感じてしまう。
八代さんのことは、ずっと憧れていた。
仕事ができて、人当たりも良くて。
そしてさりげなく気を遣えるところも。
彼のことを悪くいう人なんて、社内には絶対にいない。
そういう人と食事に行けるのは、普通なら嬉しいはずなのに。
少し前の私だったら、きっともっと心待ちにしていたはずだし、素直に楽しみにしていたはず。
自分の服を見下ろす。
なんというか、普通の服だ。
せっかくなんだからおしゃれしてきたってよかったのに、あまりにも無難な服。
……これでよかったのか、正解が分からない。
「穂村」
声をかけられて顔を上げると、八代さんが立っていた。
まさに考えていた人が目の前に現れて、内心ちょっと焦る。
「今日、定時で上がれそう?」
「はい、大丈夫そうです」
確証もないのに、すぐに返事をしてしまった。
今日が締め日の書類はないはずだし、明日の会議のためのデータも揃えてある。
なにも、抜かりはない。
午前中のうちに、やるべき作業はひと通り片付けた。
画面に向かっている間は、余計なことを考えずに済む。
それなのに、ふとした瞬間に思い出すのは、今夜のことだった。
••┈┈┈┈••