あと30日で、他人に戻るふたり
会社の外とはいえ、どこかに社内の人がいるかもしれない、なんて考えてしまう私は、この間からちょっとおかしい。


「二人で飲みに行くのって初めてじゃない?」

「ですね」

「緊張しなくていいからさ。会社の飲み会みたいな気持ちで行こうよ」

「はい…、ありがとうございます」

仕事の時とは違う、やわらかい話し方で声をかけてくれる。


気遣いができる人、というのはもうずっと前から分かっていたけれど、仕事で落ち込んだ時やミスをした時に、彼からかけられる何気ない言葉に、何度励まされたか。

それは私にだけ向けられているわけじゃないのは知っていたし、他の人にもそうだというのも知っている。

ただ、今日は違う。二人きりだ。
だから、かけてくれる言葉は、私にだけだ。


その覚悟を、私はどのくらい持ってここにいるんだろう。

知らないうちに、ずしりと気持ちが重くなった。




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