あと30日で、他人に戻るふたり
何杯かのビールのおかわりをして、料理も食べ進めた頃。

アルコールが回ってきたらしい八代さんが、ワイシャツのボタンをひとつ外しながら「俺はさ、」と私に視線を向けた。


「穂村はよく頑張ってると思うよ。入社した時から見てきたけど、ちゃんとついてきてるじゃん」

「色々、やらかしたりもしてきましたよ…」

「失敗して覚えていくんだからいいんだって。フォローなら俺たちがするし」


“俺たち”という言い方が引っかかったけれど、そのまま流す。
私はというと、あまり酔えていなかった。


楽しくないわけじゃない。
つまらないわけじゃない。

ちゃんと見てくれている。

……はずなのに。

なのに、どこか違う。


「穂村って何歳なんだっけ?」

「二十六です」

「あー、まだまだこれからじゃん。そろそろ、ガンガン自分の意見言っていい時期だよ」

「意見……」


それまで前を向いていた顔が、無意識に落ちてしまう。

簡単に言うけれど、それを言えていたら今の私は苦労していない。
無理に周りに合わせているつもりもなかったし、頑張りすぎているつもりもない。


でも、他の人や八代さんから見たら、私はそう見えているのかと思うと、それもきつかった。


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