あと30日で、他人に戻るふたり
キッチンに立って、簡単にトーストを焼く。
買っておいたイチゴジャムを取り出して、有無を言わさず塗りたくった。

洗面所からリビングへ来た大地さんに、声をかける。


「パンでいいですか?昨日の夜もパンだと思いますけど」

「いいよ」

それだけのやり取りなのに、なぜか少しだけ間ができる。


ローテーブルの前に、いつも通り並んで座った。

テレビはついているから、部屋には音が溢れている。しかし、内容はまったく頭に入ってこない。


トーストをかじる音と、隣から聞こえる小さな生活音。

────近い。

こんな距離だったっけ、と思う。

今までそんなに気にしていなかった距離感が、急に気になりだした。


「……なんかあった?」

隣から、何気ない声が飛んでくる。

「えっ、なにもないです」

食い気味に返してしまって、自分で驚いた。


「そうかな」

とはいえ、彼もそれ以上はなにも聞いてこない。

追求してこないと分かっているはずが、聞かれたことばかり気になる。


ここで視線を向けたら、すぐに私の気持ちに気づかれてしまいそうで。
隣を見られなかった。



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