あと30日で、他人に戻るふたり
「二十代だと食いつき半端ないよ」

「そういうことじゃないんだって」


思わず、言葉がこぼれる。

「……いいかなって思ってる人、いるし」


言った瞬間、自分で固まった。


「は!?」

優奈の声がひっくり返る。
同時にテーブルの上に置いてあるスープの汁がぐらん、と揺れた。


「なにそれ聞いてないんだけど!?誰!?どこで!?いつから!?」

「いや違う、そういう意味じゃなくて!」

慌てて言い直すけど、うまく言葉が出てこない。

「どういう意味!?詳しく!」

「詳しくもなにも……」

視線を逸らして、スープに逃げる。

「……まだ、整理中だから」


自分で言っておいて、それ以上はうまく言葉にならなかった。

テーブルの向こうの優奈は、いまだに大混乱状態だった。

「え、ちょっと待って。美月がそんなこと言うの初めてなんだけど」

そのまま、「ねぇ、誰?」と身を乗り出す。

「まさか他部署の人?それとも外の人?」


ああ、そうだよね。
うっかり口を滑らせたばっかりに。

私だって逆の立場なら気になる。


でも、今はまだ。絶対に言えない。
なにしろ自覚したのが、今朝なのだ。


「それはまた、おいおい話すね……」

「ねぇーー、ずるいってぇ!!」


優奈の不満げな声を聞きながら、私はまたスープを飲んでごまかしてしまった。




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