あと30日で、他人に戻るふたり
「真夏になったら、買い物大変じゃない?」

不意に尋ねられて、私も曖昧な返事をする。

「……でしょうね」

「宅配とかは?」

「嫌です。手数料が高すぎる」

「コスパ悪いって。この暑さと疲れに、あの重さ」

「でも、毎年なんとかなってるし」

まだ夏でもないのにこんなに溶けておいて、説得力はないのだが。


意を決して、私だけ立ち上がる。

このままダラダラしていたら、せっかく買ってきた食材が傷んでしまう!
さっさと冷蔵庫に入れて、気楽になった方が早い。


残りの水を飲み干して、ペットボトルをキッチンに置いてから買い物バッグを運んでいると。
後ろから追加でエコバッグがカウンターに載せられた。

どうやら彼も起きたらしい。


「めんどくさくないんですか?」

彼の口癖を投げかけてみると、それまで暑そうにしていた大地さんが軽くふっと笑った。

「……そりゃあ、めんどくさいよ」


予想通りの答えに「私に任せてください」と言おうとしたら、遮られた。

「でも、二人でやった方が早く終わるでしょ」

「……それはめんどくさくないんですね」

「だって美月だけが大変になっちゃうじゃん」


ごく普通に、事実を言ってるだけなのに。

胸の奥に、残る。

一瞬でも手を止めてしまったのを悟られないように、急いでまた買ってきたものを取り出した。


しゃがむたびに、ネックレスが揺れる。
それが、少しだけ落ち着かない。


まだ大丈夫だと、思っていた。

───でも。

もう、戻れない気がした。




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