あと30日で、他人に戻るふたり
日が暮れかけた頃、やっと暑さが落ち着いた。


八階のベランダからは、夕日が輝いて見える。
ビル群やマンションだらけの風景でも、ちゃんと綺麗に映る。

ここは、ちょうどいい高さに建っている。


買い物から帰ってきて、ひたすらダラダラして過ごした土曜日。

特別なことはひとつも起きないという平和な今日が、終わっていく────。


こんな日があってもいいよね、と思う。

毎日、朝早くに仕事に出かけて。日が暮れるまで働いて。
帰ってきたら、ご飯を食べて睡眠とったら、また次の日がやってくる。

休みの日くらいは、なにも考えなくていい日がないとつらい。


人をダメにするソファは、今日も今日とてフル稼働している。

隣でスマホを永遠にいじっている大地さんを見ると、どこか安心する。
“頑張らない人”の究極の形だ。


さっきからずっとスマホを見ているけど、なにをしているのかは分からない。
たぶん本人も、分かっていない。

私の角度から見える画面には、意味のないものばかりが映し出されている。

本当の本当に、デジタルデトックスにでも行ってこい、と思う。


時計を見て、そろそろ夕飯の支度でもしようかと身体を起こそうとした。

そのとき。

髪の毛が引っ張られて、動けなくなった。
なにかにどこか引っかかっているのか、数本の髪がぴんと張っている。

確認しようにも、動かせない。

クッションのせいかとも思ったけれど、何かが違う。


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