あと30日で、他人に戻るふたり
「……大地さん」

仕方がないので、彼を頼るしかない。

「うん?」

こちらを見もせずに、気のない返事だけが聞こえる。


「あの、助けてもらえませんか…」

「…うん。────え?」

時間差で、彼が起き上がるのが見えた。


「なに?」

「髪の毛、引っ張られてて」

「え?なに、ホラー展開?」

「そんなのいらない!」

こんな時にそんなことを言うのはやめてほしい。

さすがに大地さんも、スマホをテーブルに置いて身を乗り出してきた。


「髪の毛?どのへん?」

「このへんです」

後ろを向けないので、指で指すしかない。

呼んでおきながら、厄介な体勢にちょっとだけ視線の置きどころに困る。


「触っていい?」

ただの、確認。
これはただの確認。

彼から確認する言葉が出たので、小さくうなずく。

「……はい」

心臓が、うるさい。


私のすぐ後ろに、彼の気配がする。

そっと髪の毛をすくい上げられて、たぶん引っ張られている部分を見つけたのか触れられた。

「痛い?」

「……はい」

髪の毛も痛いけど、心臓もだいぶ痛い。


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