あと30日で、他人に戻るふたり
「なんだろう、これ。なんか……絡まってる?」

低い声でそうつぶやかれて、私はすぐに嫌な予感がした。

「あ……。もしかして、ネックレスかも」

「ネックレス?」


たぶん、目を凝らしているのだろう。
気配も声も、今までで一番近い。

呼吸が浅くなりかけて、意識しちゃだめ、と言い聞かせた。


「ネックレス外そうか?」

「……お願いします」

私がそう言うと同時に、首の後ろに手が触れる。

ネックレスの留め具を探るように、髪の毛を何度もすくい上げられた。
何も言わず、邪魔にならないように上の部分だけ髪をおさえる。


今、前を向いていてよかった。
顔なんて見せられたもんじゃない。


「……これ、どうやって外すの?」

ぼそりと尋ねられて、身動きが取れないまま「え?」と聞き返す。

「外し方、分かんない」

「ネックレスつけたことないんですか?」

「ない」

「女の人につけてあげたことは?」

「そんなのあるわけないじゃん」


即答されて、なんて返せばいいか分からなくなる。

たしかに私も男の人にネックレスをつけてもらったことなんて、一度もないかも。


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