あと30日で、他人に戻るふたり
夜ご飯は簡単に、焼きそばにした。


キャベツやピーマンには善戦していたのに、人参を相手にした途端に大苦戦していた大地さんは、最後あたりイラついていた。

「人参って……思ってたよりもカタブツなんだな」

炒めている私の横でそんなことをつぶやくから、笑いが込み上げてしまった。

「切り方の問題じゃないですか?」

「いや、包丁が悪い」

「道具のせいにしないでください」

「じゃあどうしたら人参は言うこと聞いてくれるの?」

「いいんですよ。どんなに大きくても、どんなに太くても、火を通せばいいんですから」

「……やっぱ大きすぎる?」

炒め途中の焼きそばに入っている、分厚くて大きい人参が強い存在感を示している。

思わず吹き出しそうになり、なんとかこらえる。


「……いや、食べごたえあっていいと思います」

「────そういう時はさ、正直に感想言ってよ」


ちらっと隣を見たらなんとも言えない顔をしていて、ついに笑ってしまった。


「はい、できました」

麺を入れて味を馴染ませたあと、フライパンを火からおろす。
いい匂いがキッチンに溢れる。

「焼きそばって、野菜切る時間の方が長い気がする」

「まあ、そうかもしれないです」

一応、同意はしたけれど。

たぶん、準備に時間がかかったのは、大地さんのせい。
でもそれは言わないでおいた。


< 181 / 403 >

この作品をシェア

pagetop