あと30日で、他人に戻るふたり
「うん。うまい」

言いながら、さっき自分で盛り付けた端っこに寄った焼きそばを箸で真ん中に整えている。

「焼きそばは間違いないです」

「家で作ったことないや」

「もうこれで作れますね」

私が即座に返すと、彼が焼きそばを食べる手を止めてこちらを見た。


テレビの音だけが流れる。

さっきまでの距離が、まだどこかに残っている。
視線が合った瞬間、私の方から逸らした。


彼が一瞬訪れた沈黙を破るみたいに、箸を動かす。

「人参、やっぱデカくない?」

「だから言ったじゃないですか」

「言ってないよ」

「言いました」

「え?俺、言ったっけ?」

「……言ったの、私?」


さっきまでのことを、なかったことにするみたいに笑い合う。

でも、なかったことには、できない。


テーブルの隅に、ちぎれたネックレスは置きっぱなしだった。

それを見ないようにしながら、私はまた焼きそばに箸を伸ばした。


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