あと30日で、他人に戻るふたり
マンションに戻って部屋の鍵を開けようとしたら、玄関の鍵が開いていることに気づく。

ドアノブに手を開けると、するっと開いた。


「おかえり」

洗面所にいたらしい大地さんが、顔を出した。

起きたばかりなのか、顔を洗っていたようで。手にタオルを持っている。

「あ……、ただいま」

「どっか行ってたの?」

「はい。ちょっと駅の近くのカフェに」

どうして行っていたのか、とか。
そういうことを聞いてくるわけでもないし、私も言わない。

そこまでお互い干渉しないのが、この空気感だ。


「俺、さっき起きてさ。パン食べようかと思ってて」

「────あ、パン」

思い出して、顔を上げる。

「昨日のパン屋さんで買ったやつ?」

「そう。コーヒー淹れるよ。…でももう飲んできた?」

「全然二杯目いけます。飲みたいです」


コーヒーは好きなので、気にしない。
なにか朝ごはんを食べてきたわけじゃないから、お腹も空いている。

あのパン屋さんの食パンの味は、私も気になるところだ。


今日は彼は朝からパーカーのフードをかぶっている。
室内なのに。

「なんでそんなに髪の毛、毎朝爆発してるんですか?」

狭いキッチンで体がぶつかりながら、聞いてみる。

「さあ。くせっ毛だからかな」

「大変ですね」

「昔からずっとこうだから」


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