あと30日で、他人に戻るふたり
扉を開けると、店内はほどよく混んでいた。

違うのは、前回来た時は平日だったからかサラリーマン率が高かったけれど、今回は日曜日のせいかこちらも家族連れが多かった。

テーブル席は埋まっていたので、カウンター席に並んで座る。


少しだけ距離が近い気がして、でも、それを気にしないようにした。


「何にする?」

「もう決めてます?」

口ぶりからして、これはたぶん決めてるな。
そう思いながら聞き返すと、案の定。

「俺は生姜焼き定食」

「前に来た時と一緒じゃないですか」

「だって間違いないじゃん」


“間違う”、とは?
早すぎる決断にため息をつきながら、私はメニューを開く。

この間はホッケ定食にしたから、今回は違うのにしてみたい。
どれも美味しそうで、結局迷う。

「うーん…」

考え込む私の手元のメニューを隣から大地さんが覗き込んできた。

「美月ってこういう時、迷うよね」

「慎重なんです!」

「ぱっと目に入らない?食べたいものとか」

「大地さんも理系っぽいのに感覚で決めてません?」

「うん。感覚」


これもまた、彼は即答だった。

こういう時にすぐに決められない私とは正反対。
いまだに迷っていて、メニューを見てみても次から次へと目移りしてしまう。

頭を悩ませていたら、ふとやわらかい声。

「待ってるからいいよ。別に急がなくても」


……ほんと、この人。
ぶっきらぼうのくせに、こういう時だけ。

ずるいな、と思いながらメニューを決める。

「エビフライ定食にします」

「分かった、注文するよ」


さっと店員さんを呼び止めて、注文してくれた。


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