あと30日で、他人に戻るふたり
「大地さんってお酒は飲まないんですか?家でも飲んでませんよね」

料理が届くまでまだまだかかりそうなので、賑わう店内に負けない声で聞いてみる。

彼は身を乗り出して私の声を聞き取ると、ふとイスにもたれて息をついた。

「苦手じゃないけど、家でも飲みたいほど好きでもない」

「会社の飲み会とかは?」

「あんまり行きたくないから、最低限」

「……友達、います?」

「……あー、まあ…、少数」


思わず吹き出してしまった。
この反応から察するに、狭く深く、かもしれない。

こういう何気ない会話で彼の生活や性格が垣間見えて、新しい発見もあったりする。


頬杖をついて、もう必要のないメニューを意味もなく眺めながらつぶやく。

「私、ずーっと地元の味が好きで。うどんとかおそばも、関西のおだしじゃないとだめだったんです」

「え、出身そっちなの?意外だな」

「そうですか?大地さんは?」

「東北」

「あぁー…、てことは、味は濃いめが好きですか?」

「うん。関西って味薄いもんね。物足りない」

「おだしが!コク深いんですよ!」

「いや。味が薄い」


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