あと30日で、他人に戻るふたり
バッグをソファ脇にぽん、と置くと、一度だけ部屋を見回す。

深い意味なんてないのに。ひとりであることは変わりないのに。
どこかで探してしまう、あのめんどくさがり屋のひとのこと。


「……何してるんだろ」

と小さくつぶやいて、 そのままソファに腰を下ろした。

クッションに手を置いて、ごろんと寝転がる。
途端に一日の疲れがどっと押し寄せてきた。


昨日は、 ここに大地さんが普通にいたのに。
いないことだって珍しくないのに。

帰りが待ち遠しいと思うなんて、変な感覚になる。


その時ふとポケットの中で、 スマホが震えた。

取り出して画面を見ると“藍沢 大地”の文字。
メッセージの通知が来ている。

意気込んで開いて、すっと力が抜けた。


『今日は遅くなる』

それだけの、短い文面。


……そっか。

分かってはいた。
私よりも大変な仕事をしているってことも、 普通の人より忙しいってことも。

最初に生活リズムは不規則だって言ってたはずなのに、どこかで一緒にキッチンでご飯を作ったり、「いただきます」をふたりで言うのが当たり前みたいに思っていた。

あれは、たまたまだったのに。


「……そっか」

同じ言葉を、 もう一度つぶやいた。


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