あと30日で、他人に戻るふたり
チューハイを置いて、ゆっくり立ってキョロキョロしてしまう。

不規則だけど、カタン、コトン、とどこかから音がずっとしている。
音の特定をするべくテレビを消し、原因となっている音の出処を探る。


カタン、カタン…
繰り返される謎の不気味な音。

耳をすませると、ベランダの方が聞こえるような──
今日は部屋干しにしているから、ベランダには何もないはず。


“いわくつきの物件”というパワーワードが、今頃になって頭の中を支配してくる。

音がするのはベランダだと確信し、様々な事態を想定する。
ここは八階だから、誰か不審者が侵入していることはないはず。施錠も必ずしているし、家庭菜園とかもしていない。

だとしたら、この音はなに?


おそるおそる閉まっているカーテンに近づき、深呼吸をひとつする。

いつでも逃げられる体勢を意識してそっとカーテンに手をかけた。

────ひと思いに、一気にカーテンを引く。

シャッ!!と大きな音を立てて開けたカーテンの向こうに。


そこにあったのは。

ベランダの柵に引っかかったビニール袋と、物干し竿にぶつかっていた洗濯ばさみだった。

風にあおられて、カタカタと不規則に音を立てている。


「……は?」

数秒、固まる。

それから一気に力が抜けて、その場にへたり込んだ。

「いや、ビニール袋と洗濯ばさみかい……」

怖がってた自分がバカみたいで、思わず笑いそうになる。


ベランダに出て、どこかから飛んできたビニール袋を取って、洗濯ばさみはいったん回収しておいた。
これで音はもうしないはず。


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