あと30日で、他人に戻るふたり
音の原因も分かってほっとして、再びラグの上に座ってチューハイを口に運んだ。
ひとりの時にこんなくだらないホラー展開、本当に勘弁してほしい。

残っていたお惣菜を食べようと箸を持つ。

────その時。


コトン。


今度は、部屋の中で音がした。

「……え?」


さっきと違う、ベランダからの音じゃない。
キッチンの方からだ。

なんで、今日に限ってこんなに物音が響くの?
そんなことを思いながら、ゆっくり振り向く。


行きたくはないけれど、確認しないわけにもいかないわけで。

さっきまで夕飯の支度をしていたキッチンを、そっと覗き込む。
無人のキッチンは、なにか落ちているわけでもないし、ズレているわけでもなさそうだ。


水切りカゴの中には、コップがひとつだけ。
だとすると、このコップが少し動いたとか?置き方、そんなに不安定だったっけ。

胸の奥が、またざわつく。

“いわくつきの物件”がどうしても頭から離れない。


「……もう。やだ…」

無意識につぶやいて、仕方なくキッチンに足を踏み入れようとした、その時。


玄関から、ガチャ、という金属音。


「ッッッぎゃああああァァァァァ!!!!!」

思いっきり大声を出してうずくまる。


急いだような足音と、リビングのドアが開く音がした。

「────ただいま」


振り返ると、徹夜明けなのかなんなのか、疲れきった大地さんが立っていた。

もはや久しぶりにも感じる大地さんのその声に、不安と安堵が入り混じった感情でそのままぶつかるみたいにしがみつく。

「もう!!!!!どこ行ってたんですか!!!!!」

「は?え?」

勢いよく突進されたからか、彼がよろめいて壁に頭をぶつける音がした。
そんなの、今の私には構っていられない。

文句が次から次へと口をつく。


「仕事仕事仕事仕事仕事!仕事ばっかりなんだから!さっきから変な音してるんです!!!」

「俺、帰ってきたばっかなんだけど」

「早く!キッチン見て!変な音したんです!」


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