あと30日で、他人に戻るふたり
午後からは、小金井案件の最終確認も兼ねた打ち合わせが入っていた。


会議室には営業と開発、それから私を含めた関連部署の数名。

壁際のモニターには共有資料が映され、各自がノートパソコンを開きながら席についていく。


私は会議資料を開きながら、なんとなく周囲を見回した。


営業側では八代さんが中心になって話している。

その隣では齋藤さんがスケジュール表を確認していて、浅井さんは「絶対これって今日長引くやつじゃないですか?」なんて一応小声だけど、それなりに聞こえるように話している。

開発側の竹中さんは、いつも通り静かにパソコンを開いていた。


こういう空気、私は嫌いじゃなかった。

それぞれ立場は違っても、同じ案件に向かって動いている感じがするから。


「じゃあ、始めますか」

八代さんの一言で、会議室の空気がしっかりと仕事モードへ切り替わる。


話し始めた瞬間から、やっぱり彼はすごいなと思う。

全部、持っていく。

言葉が止まらない。
相手が聞き返す前に次の説明へ進んで、自然と全体を引っ張っていく。

少し前までの私は、そういう八代さんの姿に純粋に憧れていた気がする。


“仕事ができる人”。

たぶん、ずっとそう思っていた。


< 233 / 403 >

この作品をシェア

pagetop