あと30日で、他人に戻るふたり
会議が終わると、さっきまでとはうって変わって一気に空気が緩んだ。


パソコンや資料を片付けながら、営業部の人たちが盛り上がっている。

「あー、明日ぜっったい飲みすぎるやつじゃーん」

「中村さん、毎回ほんとにうるさいですもんね」

浅井さんが笑いながら筆記用具をペンケースにしまう。

その横で、中村さんは「失礼だなー」と適当に返していた。


彼らをまとめるみたいに、八代さんが楽しげな表情を浮かべてにやりと笑う。

「明日、遅刻厳禁だからなー」

と慣れた口調で釘を刺したかと思えば、今度は私の方へと向き直った。


「穂村、明日そっち休みだよね?時間とか大丈夫そう?」

「あ、はい。大丈夫です」

「よかった。じゃあ予定通り駅で集合ね」

「分かりました」


私がうなずくと、八代さんはふっと笑ってもう別の人との会話へ戻っていく。


周囲ではまだ飲み会の話で盛り上がっていて、会議室の空気はすっかり仕事終わりの雰囲気だった。

その輪の中にいながら、なぜか私は少しだけ落ち着かなかった。


理由は、自分でもよく分からない。

ただ、“楽しみ”だけではない感情が、胸のどこかに引っかかっていた。




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