あと30日で、他人に戻るふたり
なんだかんだで、
休日の時間はあっという間に過ぎていく。


夕方になったあたりで、重い腰を上げて寝室へ入った。

飲み会へ出かける支度をしなくては、とメイクをしてからクローゼットを開く。


会社の飲み会なのに、なぜか服が決まらない。

別に気合いを入れるような場でもないのに、ブラウスを何枚か広げては戻してを繰り返してしまう。

完全にプライベートでもなく、完全に仕事でもない。
こういう時って、何を着ていけばいいんだっけ。


しばらく悩んで、無難な白いブラウスとロングスカートを取り出して身につけた。

アクセサリーをつけようとして、ふと目についたのは先週末に大地さんがちぎったシルバーのネックレス。

そんなこともあったっけ、と息をついてそっとまた戻す。
直せなくても、なんとなく取っておいてしまう。

その代わり、ゴールドの細いネックレスを首につける。
バッグも会社に行くのよりも小ぶりなショルダーに貴重品を移して、とりあえず出かける準備はひと段落した。


リビングに出て、ヘアセットをしに洗面所へ行こうとパタパタと通過しようとしたところで大地さんがぼそりとつぶやいた。


「え?その服で行くの?」

「────え?」

思わぬ言葉に、足を止めて聞き返してしまう。

「へ、変ですか?」

「そういうわけじゃないけど」


じゃあ、どういう意味?

不満げな私の視線から顔を逸らした彼は、パソコンを開いてなんでもないように手を振る。


「ごめん、呼び止めて」

「もー。はっきり言わないと気になるじゃないですかー」

「今じゃない気がするから、今度」


なんだか釈然としないまま、洗面所で髪の毛を整えた私はバッグを肩にかける。

リビングに顔を出して、向こうにいる大地さんへ言葉を投げた。

「じゃ、行ってきます」

「うん。気をつけて」


気のない返事を背中に受けながら、玄関のドアを開ける。
そのまま、振り返らずにしっかり閉めた。




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