あと30日で、他人に戻るふたり
「いえ、そういうのではなく…」

「なんかダブり案件だったらしいんだよ。で、同居してるんだよな?」

「やっばぁ…!そんなこと現実にあんの?え?穂村ちゃん、襲われてない?」

「そんなのないです」


やめてほしい、すぐそっちに想像を持っていくの。

知らないうちに冷たい口調になってしまったものの、中村さんは気にすることなく小さく笑った。

「つまんないねぇ。なんもしてこない男ってのもどうなのよ。男として終わってんじゃね?」

「穂村が無事なのってすごいよなぁ」

笑いながら言われたその言葉に、なぜか胸の奥がざらついた。

「いるかどうか分からないんですけど、一応連絡だけします」


大地さんに対して、まあまあ失礼なことを言っている二人を放置して私は家にいるかもしれない彼にメッセージを打つ。


『ごめんなさい』
『今から少しだけ会社の先輩ふたりを連れていきます』
『会いたくない時は外に出てくれると助かります』


そのメッセージが、既読になることはなかった。


……最悪の場合、寝てしまってたらどうしよう。
土下座して謝るしかないかもしれない。

思わずため息をついていたら、先を歩く八代さんから軽い声が聞こえた。


「穂村、コンビニで酒買ってこーぜ」

「あ…、はい」


返信のないスマホを握りしめて、私はとりあえず歩き出した。


本当は、ここでもっと強く断るべきだったのかもしれない。

でも、今さら空気を壊すのも違う気がしてしまった。




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